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浮世絵は、近すぎない程度に近くで見るもの

東京・原宿の太田記念美術館で浮世絵を見てきました。この美術館のよいところは、浮世絵を近すぎない程度に近いところから見せてくれることです。おかげで私は、浮世絵の緻密さや細やかさをたっぷり楽しむことができました。
浮世絵は絵そのものが大きくない上に、描写がやたら細かいです。その一方、あまり近くで見るのも、作品保護の観点からは好ましいとはいえません。だから浮世絵は、遠くで見るよりも、近すぎない程度に近くで見る方が絵の面白さや細やかさを味わえるといえます。太田記念美術館での作品展示は、こうした難しさを見事にカバーしているように思いました。近すぎない程度に近い、絶妙な距離の取り方で作品を見せてくれるのは、浮世絵専門の太田記念美術館ならではの芸当だ、といえそうです。
ところで私は、2014年の秋に上野の森美術館で開催された「ボストン美術館浮世絵名品展 北斎」を見に行ったことがあります。このときは、壁に掛けられた作品から50-60センチくらい離れたところから作品を見るようになっていました。床の上に線が引かれていて、その線よりも作品に近づいてはいけないことになっていたのです。でも細かいところまで緻密に描かれた作品をもっとよく見ようとして、線よりも作品に近づいたために、美術館の係員から注意を受ける人がたくさんいました。
しばらくたって、他の美術館で浮世絵をもっと近くから見たところで振り返ってみると、上野の森美術館で起こったことは、単に観客のマナーの問題とは言い切れないのではないか、という気がします。
浮世絵は、近すぎない程度に近くで見るもの。そうするからこそ、描写の細やかさや巧みさを味わえる―今回浮世絵を近くで見て、改めて実感しました。

-nikki